「日本の木造住宅の97%以上が構造計算されていない事実を知っていますか?」
住宅業界内でタブー視されるフレーズではありますが、裏返せば「2階建て以下の木造住宅」における日本の矛盾を指摘しています。
しかしながら、昨今の消費者保護の観点から、業界の猛反発を受けながらも国土交通省も重い腰をあげ、2009年度中には木造2階建てや木造平屋の建物も建築確認申請時での構造計算書の添付が義務付けられると・・・予てからささやかれていました。

折しも、『建築審査の簡素化の方針。厳罰は強化。来年の通常国会で法改正提出へ』というニュースが舞い込んできました。

民主党がマニフェスト2009に掲げた、雇用・経済対策の公約の「建築基準法などの関連法令の見直し」を実践しようというものです。
確かに雇用・経済対策は必要です。
しなしながら、これまでの自民党政権下の経済最優先の施策では、国民の生命・財産を守るという根源的な価値観がないがしろにされ続けてきました。
政治主導をスローガンとする民主党政権の今こそ、「地震国である我が国の国民は、構造計算に裏付けされた安全な住居に住まう権利がある」とでも、声高らかに宣言して欲しいものです(笑)。

「壁量計算は構造計算ではありません」

現在2階建てでは、構造計算よりもずっと簡単な「壁量計算(壁倍率や必要壁量)」という方法が用いられています。
これは、建物の床面積と外壁の面積から、地震や風の力に耐えるために必要な壁の量を求め、実際に設計する建物がその壁の量を満たしているかどうか判断するものです。

同時に、建築基準法の46条4項の壁量計算は、46条1項の規定によって・・・とあります。
全ての方向の水平力に対して安全であることを確認しなければ意味を成しません。
また、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)には、水平構面の床倍率が定められていますが、建築士でも知らない方は多いようです。
水平構面の安全を確認していなければ「欠陥住宅」と判断されても、プロとしては文句は言えません。

一方、一般的な構造計算は、専門用語では「許容応力度計算」と言います。
壁量計算は簡易的な計算ですので、建築のプロは壁量計算を構造計算とは呼びません。
構造計算と呼べるのは「許容応力度計算」「限界耐力計算」か、それ以上の細かな計算方法になります。
許容応力度計算は、壁量計算に比べて計算量が圧倒的に多く、内容も複雑になり、当社が標準採用しているSE構法では、2階建ての建物でもA4用紙400ページ以上になることも珍しくありません。

計算量が多くなることから、建物の状態をより詳細に知ることが出来ます。 例えば、壁量計算では、それぞれの柱が負担している重さは分かりませんが、構造計算(許容応力度計算)では正確に分かります。
また、構造計算(許容応力度計算)では、柱や梁、土台や金物の一つ一つまで、全て安全を確認していきます。
これに対して壁量計算は壁だけの計算です。
柱や梁は計算にさえ含まれませんので、壁量計算ではそれらの安全性の検討はできません。
全ての建築物は安全性を確かめなければならず(建築基準法20条)、壁量計算だけではその確信を得ることは出来ません。

残念ながら、我が国の現状では、木造2階建てで構造計算されたものは1%にも満たないのが実情です。
この実情を変えるべく、来年の通常国会において国民本位の議論が戦わされることを切に願います。
2009/10/19(月) 18:26 福田明伸より PERMALINK COM(1)

COMMENT

まったくの同感!です。ご指摘のように根源的な価値をもとに、大いに議論して欲しいですよね。正直者が馬鹿をみない制度を早期に実現して欲しいですよね、るるる・・・・るッ!
笹団子マニア 2009/10/22(木) 13:43 EDIT DEL

COMMENT FORM

以下のフォームからコメントを投稿してください