いわゆる「事故米」問題。

最近ではニュースの扱いが小さくなってきたように思えるのですが、私たち食の消費者に根源的な問題を突き付けた未だ未解決の大事件です。その中でも、一被害者である老舗の和菓子屋さんや、名の通った酒造メーカーさんの社長さんが深々と頭を下げる謝罪会見を見ると、私も他人事ではないと思えるのです。

・・・それは、私自身のある苦い教訓からです。

ある日、お引き渡しから2年が経つT様から1本のお電話がありました。
「塗り壁からやと思うけど、時々その粉が床に落ちてるの。一度確認してもらえないかしら・・・」

原因が掴めないので、とにかく訪問。奥様からその粉が落ちていたという数か所を教えていただき、詳しく観察。
2ミリほどの虫孔が発見され、その下には木くず混じりの粉が・・・ということは「キクイムシ」。
そしてその種別は「ヒラタキクイムシ」と判明。
骨組みに用いる杉や松や桧、外壁下地に用いる構造合板などの針葉樹は食害がないとのことなので、多種の木材を用いる木造住宅ですが、おおよそ部位が特定できそうです。

早速、専門業者と床下や天井裏を調査。その結果、発生原因は下地材に用いた1枚の「ラワンベニヤ」からだと判明。
しかしながら、その完全駆除には「ガス燻蒸(くんじょう)」という大掛かりな方法を用いることに。
その作業は大変骨の折れる作業でした。
何よりT様ご家族には、作業中は外泊いただくなど大変なご迷惑をお掛けしたにも関わらず、快くご協力いただけたことに何より感謝です。

約2年掛かりでしたが、その後は再発生もなく一安心。
たった1枚のラワンベニヤから発生したT様邸のキクイムシ騒動。
シックハウス法が施行され、人体や室内空気環境に良かれと「F☆☆☆☆」なる薬剤処理程度の低い材料を使ったのが裏目に出た結果でした。

この材料の納入した材木店も、この騒動の時点ではすでに廃業していた為、流通の経路を辿る術もなし。
また、この木材店も材木は木材市場から仕入れていた筈ですので、想像するに、当社と同様な被害を被った先もあった筈です。

当社ではこのキクイムシ騒動を教訓に、ラワンなどの輸入材の広葉樹材料を用いるのを極力避け、針葉樹材料を用いるか空気環境に悪影響の無い防虫合板を用いています。
また、業界も重い腰を上げはじめ、まずは構造材の流通履歴(トレーサビリティと言います)の整備を進めています。
ちなみに、当社が標準で用いるSE構法の骨組は、このトレーサビリティの仕組みが既に確立しています。

「食」の安全を脅かすニュースが絶えない昨今ですが、「住」における安全確保はニュースになってからでは手遅れです。
また、取得してから長期間保存される住宅は、新築時のトレーサビリティはもとより、取得してからの住まい手側の履歴管理も重要です。

近々法案化される予定の「200年住宅」。
この構想における「志し」も「課題」も、これらの教訓から学ぶべきところが多いのではないでしょうか。

AKINOBU FUKUDA

※写真:事故米の混入で頭を下げる青柳総本家の後藤敬社長(YOMIURI ONLINEより)
2008/10/14(火) 10:46 福田明伸より PERMALINK COM(0)

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